多次元変数と式

多次元変数の定義

PyQBPPは、関数 var() および var_int() を使って、任意の深さの多次元変数および多次元整数変数をサポートしています。 基本的な使い方は以下の通りです。

  • var("name", s1, s2, ..., sd): 指定された name と形状 $s_1\times s_2\times \cdots\times s_d$ を持つ Var オブジェクトの配列を作成します。
  • between(var_int("name", s1, s2, ..., sd), l, u): 指定された範囲と形状を持つ VarInt オブジェクトの配列を作成します。

以下のプログラムは $2\times 3\times 4$ の次元を持つバイナリ変数を作成します。

import pyqbpp as qbpp

x = qbpp.var("x", 2, 3, 4)
print("x =", x)

x 内の各 Var オブジェクトは x[i][j][k] としてアクセスできます。

個別の範囲を持つ整数変数配列の作成

多次元整数変数配列を定義する場合、qbpp.between(qbpp.var_int("name", s1, s2, ...), l, u) で作成された全要素は同じ範囲 $[l, u]$ を共有します。 しかし実際の問題では、各要素に異なる範囲が必要な場合が多くあります。 これを実現するには3つの方法があります。

方法1: プレースホルダ配列

まず qbpp.var_int("name", s1, s2, ...) == 0プレースホルダ配列を作成し、qbpp.between() で各要素に個別の範囲を割り当てます:

import pyqbpp as qbpp

max_vals = [3, 7, 15, 5]
x = qbpp.var_int("x", len(max_vals)) == 0
for i in range(len(max_vals)):
    x[i] = qbpp.between(x[i], 0, max_vals[i])
for i in range(len(max_vals)):
    print(f"x[{i}] = {x[i]}")

ここで、qbpp.var_int("x", 4) == 0 は定数ゼロの VarInt プレースホルダ4個の配列を作成します。 各要素は qbpp.between(x[i], 0, max_vals[i]) で個別の範囲に再代入されます。 qbpp.between() はプレースホルダから名前を自動的に引き継ぐため、明示的な名前の指定は不要です。

NOTE == 0 の構文は min_val = max_val = 0(定数ゼロのプレースホルダ)の VarInt を作成するものであり、等号制約を作成するものではありません

方法2: between() にリストを渡す

qbpp.between()min_valmax_val にPythonリストを渡すことができます。 配列の各要素にリストの対応する範囲が割り当てられます:

import pyqbpp as qbpp

max_vals = [3, 7, 15, 5]
x = qbpp.between(qbpp.var_int("x", len(max_vals)), 0, max_vals)
for i in range(len(max_vals)):
    print(f"x[{i}] = {x[i]}")

これが最も簡潔な方法です。var_int("x", n) で名前付き配列ビルダーを作成し、 between() がリストから要素ごとに個別の範囲を割り当てます。 C++ の lower <= qbpp::var_int("x", n) <= upper 構文に対応します。

方法3: リスト内包表記と Array

Python のリスト内包表記を qbpp.Array() で包む方法もあります:

import pyqbpp as qbpp

max_vals = [3, 7, 15, 5]
x = qbpp.Array([qbpp.between(qbpp.var_int(f"x[{i}]"), 0, max_vals[i])
                  for i in range(len(max_vals))])

この方法ではプレースホルダなしに変数を直接作成します。 各変数に明示的な名前(例: f"x[{i}]")を指定する必要があることと、 要素ごとの演算を使用するには結果を qbpp.Array() で包む必要がある点に注意してください。

多次元式の定義

PyQBPPでは、関数 expr() を使って任意の深さの多次元式を定義できます。

  • expr(s1, s2, ..., sd): 形状 $s_1\times s_2\times \cdots\times s_d$ を持つ Expr オブジェクトの多次元配列を作成します。

以下のプログラムは、形状 $2\times 3\times 4$ の Var オブジェクトの3次元配列 x と、 サイズ $2\times 3$ の2次元配列 f を定義します。 次に、ネストされたループを使って、各 f[i][j]x[i][j][0] から x[i][j][3] までの合計を蓄積します。

import pyqbpp as qbpp

x = qbpp.var("x", 2, 3, 4)
f = qbpp.expr(2, 3)
for i in range(2):
    for j in range(3):
        for k in range(4):
            f[i][j] += x[i][j][k]
f.simplify_as_binary()

for i in range(2):
    for j in range(3):
        print(f"f[{i}][{j}] =", f[i][j])

このプログラムの出力は以下の通りです。

f[0][0] = x[0][0][0] +x[0][0][1] +x[0][0][2] +x[0][0][3]
f[0][1] = x[0][1][0] +x[0][1][1] +x[0][1][2] +x[0][1][3]
f[0][2] = x[0][2][0] +x[0][2][1] +x[0][2][2] +x[0][2][3]
f[1][0] = x[1][0][0] +x[1][0][1] +x[1][0][2] +x[1][0][3]
f[1][1] = x[1][1][0] +x[1][1][1] +x[1][1][2] +x[1][1][3]
f[1][2] = x[1][2][0] +x[1][2][1] +x[1][2][2] +x[1][2][3]

演算による式配列の作成

Expr オブジェクトの配列は、expr() を明示的に呼び出さなくても作成できます。 算術演算が配列形状の結果を生成する場合、同じ形状の Expr オブジェクトの配列が自動的に作成されます。

import pyqbpp as qbpp

x = qbpp.var("x", 2, 3)
f = x + 1
f += x - 2
f.simplify_as_binary()
for i in range(2):
    for j in range(3):
        print(f"f[{i}][{j}] =", f[i][j])

このプログラムの出力は以下の通りです。

f[0][0] = -1 +2*x[0][0]
f[0][1] = -1 +2*x[0][1]
f[0][2] = -1 +2*x[0][2]
f[1][0] = -1 +2*x[1][0]
f[1][1] = -1 +2*x[1][1]
f[1][2] = -1 +2*x[1][2]

多次元配列のイテレーション

PyQBPPの配列はPythonのイテレーションをサポートしているため、ネストされた for ループが使用できます。

import pyqbpp as qbpp

x = qbpp.var("x", 2, 3)
f = x + 1
f += x - 2
f.simplify_as_binary()
for row in f:
    for element in row:
        print(f"({element})", end="")
    print()

このプログラムの出力は以下の通りです。

(-1 +2*x[0][0])(-1 +2*x[0][1])(-1 +2*x[0][2])
(-1 +2*x[1][0])(-1 +2*x[1][1])(-1 +2*x[1][2])

Array と Python の list

PyQBPP の Array は QUBO++ 共有ライブラリ(.so)に裏打ちされた不透明オブジェクトです。 Python の list とは異なり、QUBO++ の演算に最適化された専用のデータ構造です。

Python リストから Array の作成

qbpp.Array() を使って Python リストを Array に変換できます:

w = qbpp.Array([64, 27, 47, 74, 12, 83, 63, 40])

変換後の Array は、要素ごとの算術演算(+, -, *, /, ~)、sum()sqr()simplify() などの QUBO++ 関数を効率的にサポートします。

qbpp.Array() が不要な場合

Python リストが Array との算術演算で使われる場合、自動的に変換されます。 例えば:

w = [64, 27, 47, 74, 12, 83, 63, 40]
x = qbpp.var("x", len(w))
f = w * x       # list * Array → 要素ごとの乗算

この場合、wqbpp.Array() でラップする必要はありません。 ただし、w が複数の演算で繰り返し使われる場合は、あらかじめ qbpp.Array() でラップしておくことで、list から Array への変換が毎回発生するのを避け、高速化が期待できます。

例: listArray の動作の違い

以下の例は、Python の listArray の違いを示しています:

import pyqbpp as qbpp

x = qbpp.var("x")
u = [x+2, x+3, x+5, x+7]
w = qbpp.Array([x+2, x+3, x+5, x+7])
print(f"2 * u = {2 * u}")
print(f"2 * w = {2 * w}")

出力:

2 * u = [2 +x, 3 +x, 5 +x, 7 +x, 2 +x, 3 +x, 5 +x, 7 +x]
2 * w = [4 +2*x, 6 +2*x, 10 +2*x, 14 +2*x]

Python の list である u では、2 * uリストの繰り返し(8要素)になります。 Array である w では、2 * w要素ごとの乗算(各要素が2倍)になります。

Python list との主な違い

  Array Python list
要素ごとの + 要素ごとの加算 リストの連結
要素ごとの * 要素ごとの乗算 リストの繰り返し
~x 要素ごとの否定 TypeError
sum() 全要素の合計を Expr として返す Python 組み込みの sum
sqr() 要素ごとの二乗 利用不可
append(), pop() 利用不可 利用可能
スライス slice(), head(), tail() x[1:3]

NOTE Array は固定サイズの不透明コンテナです。append()pop()insert()、スライス代入などの Python リスト操作はサポートされていません。 部分配列の抽出には QUBO++ の関数 slice()head()tail() を使用してください。


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Page last modified: 2026.04.04.