PyQBPP の表現力

QUBO/HUBO ソルバーが最終的に受け取るのは,バイナリ変数の多項式です. そのため従来は,解きたい問題を自分でそこまで降ろす必要がありました. 整数はバイナリ変数の列に展開し,不等式にはスラック変数を足し, 絶対値や最大値は補助変数と場合分けで表現し,3 次以上の項は 2 次に落とす. 変換のたびに変数が増え,ペナルティの重みを調整する手間が生まれ, 元の問題の構造は見えなくなります.

PyQBPP はこの作業を要求しません. 書いたモデルが,そのまま解かれるモデルです.

従来の QUBO で必要な手作業 PyQBPP での書き方 詳細
3 次以上の項を補助変数で 2 次に落とす そのまま書く HUBO と QUBO
$\bar{x}$ を $1-x$ に展開する(項数が爆発する) ~x と書く 否定リテラル
整数をバイナリ変数の列に展開する integer= で宣言する ネイティブ整数変数
絶対値・最大値を補助変数と場合分けで表す qbpp.abs()qbpp.max() と書く 非線形関数とネイティブ制約
不等式にスラック変数を足し,重みを調整する qbpp.cons() で囲む 非線形関数とネイティブ制約
係数のオーバーフローを自分で管理する モジュールを選ぶ 変数と式のデータ型

本ページはこれらの機能の概観です. それぞれの詳しい説明は表の右端のリンク先を参照してください.

任意の次数の項

PyQBPP の式は 2 次に限定されません. 3 次以上の項をそのまま書くことができます.

import pyqbpp as qbpp

y = qbpp.var("y", 4)
cubic = 2 * y[0] * y[1] * y[2] - 3 * y[1] * y[2] * y[3]
print("cubic =", cubic)

このプログラムの出力は以下の通りです:

cubic = 2*y[0]*y[1]*y[2] -3*y[1]*y[2]*y[3]

PyQBPP にバンドルされているソルバーは HUBO をそのまま扱うため, 2 次化は必要ありません. 2 次のモデルしか受け取らない外部ソルバーに渡すときだけ, HUBO の QUBO への変換で 2 次化してください.

否定リテラル

バイナリ変数 $x$ の否定 $\bar{x}$ は ~x と書けます. $\bar{x}$ を $1-x$ に置き換えて展開する必要はありません.

import pyqbpp as qbpp

x = qbpp.var("x", 4)
neg = ~x[0] * ~x[1] * ~x[2] * ~x[3]
expanded = qbpp.simplify((1 - x[0]) * (1 - x[1]) * (1 - x[2]) * (1 - x[3]))
print("neg      =", neg)
print("expanded =", expanded)

このプログラムの出力は以下の通りです:

neg      = ~x[0]*~x[1]*~x[2]*~x[3]
expanded = 1 -x[0] -x[1] -x[2] -x[3] +x[0]*x[1] +x[0]*x[2] +x[0]*x[3] +x[1]*x[2] +x[1]*x[3] +x[2]*x[3] -x[0]*x[1]*x[2] -x[0]*x[1]*x[3] -x[0]*x[2]*x[3] -x[1]*x[2]*x[3] +x[0]*x[1]*x[2]*x[3]

どちらも同じ値を持つ式ですが,項数は 1 対 16 です. 否定リテラルが 1 つ増えるたびに展開後の項数は 2 倍になるため, この差は変数が増えるほど広がります.

整数変数 — 2 つの選択肢

PyQBPP には性格の異なる 2 種類の整数変数があります.

import pyqbpp as qbpp

a = qbpp.var("a", between=(0, 10))   # バイナリエンコーディング
b = qbpp.var("b", integer=(0, 10))   # ネイティブ整数変数
print("a =", a)
print("b =", b)

このプログラムの出力は以下の通りです:

a = a[0] +2*a[1] +4*a[2] +3*a[3]
b = b

between= で宣言した整数変数は, その場でバイナリ変数の重み付き和に展開されます(整数変数). integer= で宣言した整数変数は展開されず, 整数値をそのまま保持します(ネイティブ整数変数). どちらも式の中では同じように扱えます.

  between= integer=
式の中での実体 バイナリ変数の重み付き和 整数値そのもの
バンドルソルバー バイナリ変数として探索 整数値のまま探索
範囲を広げたとき 変数の個数が増える 変数の個数は増えない
バイナリ専用の外部ソルバー そのまま渡せる qbpp.binarize() で変換
MILP ソルバー バイナリ変数として渡る 整数変数のまま渡せる

数量(個数・時刻・在庫量など)にはネイティブ整数変数が適しています. どれを選ぶかというラベル(訪問順序・色など)には, 整数変数よりも one-hot 表現が適しています.

非線形関数

絶対値・ReLU・最大値・最小値を,式の中で直接使えます. 補助変数を導入したり場合分けを書いたりする必要はありません.

import pyqbpp as qbpp

q = qbpp.var("q", integer=(0, 10))
r = qbpp.var("r", integer=(0, 10))
over = 2 * qbpp.relu(q - 6)   # 6 を超えた分だけ増えるコスト
gap = qbpp.abs(q - 5)         # 5 からのずれ
peak = qbpp.max(q, r)         # 2 つの式の最大値

qbpp.abs(f, 2)qbpp.relu(f, 2) と書くと 2 乗になります. 詳しくは非線形関数とネイティブ制約を参照してください.

制約の宣言

式の中の制約部分を qbpp.cons() で囲むと, その部分は制約とみなされて特別に処理されます. スラック変数を自分で足す必要はありません.

import pyqbpp as qbpp

w = qbpp.var("w", 3)
load = 3 * w[0] + 5 * w[1] + 7 * w[2]
obj = -qbpp.sum(w)                        # 目的関数
obj += 100 * qbpp.cons(load <= 10)        # 不等式制約
obj += 100 * qbpp.cons(qbpp.sum(w) == 2)  # 等式制約

等式・片側の不等式・両側の範囲を同じ書き方で宣言できます. 制約を満たす解が見つかったかどうかは,ソルバーが違反本数として報告します. 詳しくは非線形関数とネイティブ制約を参照してください.

係数の型

係数とエネルギー値の型は,インポートするモジュールで切り替えられます. 32 ビット整数から,128 ビット整数,桁数無制限の多倍長整数, 実数の float まで選べます. 式の書き方は型によらず同じです. 一覧は変数と式のデータ型を参照してください.

すべてを 1 つのモデルに

ここまでの機能は組み合わせて使えます. 次のプログラムは,3 本の生産ラインへの割当を求めます.

  • ライン $i$ を使うかどうかをバイナリ変数 use[i] で表し,使うと段取り費 5 がかかる
  • ライン $i$ の生産量をネイティブ整数変数 q[i](0 以上 10 以下)で表す
  • 生産量が 6 を超えた分には超過費が 2 倍でかかる(relu
  • ライン 0 と 1 の生産量の偏りをコストに加える(abs
  • 停止しているラインでは生産できない(不等式制約)
  • 3 本の生産量の合計はちょうど 20(等式制約)
  • 3 本すべてを止めた場合は違約金 50(3 次の否定リテラル項)
import pyqbpp as qbpp

use = qbpp.var("use", 3)                 # バイナリ変数
q = qbpp.var("q", 3, integer=(0, 10))    # ネイティブ整数変数

f = 0
for i in range(3):
    f += 5 * use[i]                                 # 段取り費
    f += 2 * qbpp.relu(q[i] - 6)                    # 超過費
    f += 100 * qbpp.cons(q[i] - 10 * use[i] <= 0)   # 停止中は生産できない
f += qbpp.abs(q[0] - q[1])                          # ライン間の偏り
f += 50 * ~use[0] * ~use[1] * ~use[2]               # 全停止の違約金
f += 100 * qbpp.cons(qbpp.sum(q) == 20)             # 需要をちょうど満たす

f.simplify_as_binary()
sol = qbpp.ExhaustiveSolver(f).search()
for i in range(3):
    print(f"use[{i}] = {sol(use[i])}, q[{i}] = {sol(q[i])}")
print("energy =", sol.energy)

このプログラムの出力は以下の通りです:

use[0] = 1, q[0] = 7
use[1] = 1, q[1] = 7
use[2] = 1, q[2] = 6
energy = 19

段取り費 15,超過費 4(生産量 7 が 2 本),偏り 0,制約違反なしで合計 19 です. このモデルには,補助変数もスラック変数も 1 つも現れていません.

従来の形式へ降ろす

外部のソルバーに渡すなど,従来の形式が必要になったときは, モデルを明示的に降ろすことができます.

関数 変換
qbpp.binarize(f) ネイティブ整数変数をバイナリエンコーディングに
qbpp.expand_cons(f) qbpp.cons() の宣言を従来のペナルティ式に
qbpp.reduce(f) 3 次以上の項を 2 次に
import pyqbpp as qbpp

n = qbpp.var("n", integer=(0, 10))
bits = qbpp.binarize(n)
print("bits =", bits)

このプログラムの出力は以下の通りです:

bits = n#0 +2*n#1 +4*n#2 +3*n#3

MILP ソルバーへは,整数変数を整数のまま渡す ILP モードも利用できます.

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Page last modified: 2026.08.26.

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