スターバトル
スターバトルは、$N\times N$ の盤面が $N$ 個の領域に区切られたパズルです。 次の条件をすべて満たすように盤面に星を置きます:
- 各行にちょうど $k$ 個の星が入る。
- 各列にちょうど $k$ 個の星が入る。
- 各領域にちょうど $k$ 個の星が入る。
- 星どうしは、上下・左右・斜めのいずれでも隣接してはならない。
ここでは $N=10$、$k=2$ の問題を解きます。 同じ文字のマスが 1 つの領域を表します:
A A A A A B B B C C
A B B B B B B C C D
A E B F F C C C D D
E E B F F G C C C D
E E E F F G H I I D
E E E F F G H I I D
E F F F F G H H I D
E F J J J G H H I I
J J J J G G G H H G
J J J J J J G G G G
QUBO 定式化
各マスにバイナリ変数 $x_{i,j}$ を割り当て、$x_{i,j}=1$ をマス $(i,j)$ に星を置くことと解釈します。 変数の個数は盤面のマス数と同じ $N^2$ 個です。
- 各行にちょうど $k$ 個:
- 各列にちょうど $k$ 個:
- 各領域 $R_r$ にちょうど $k$ 個:
- 星どうしが隣接しない。
最後の条件は、隣接するマスの組を 1 つずつ数え上げる代わりに、 $2\times 2$ の窓に入る星は高々 1 個と書けます:
\[\begin{aligned} x_{i,j}+x_{i,j+1}+x_{i+1,j}+x_{i+1,j+1}\leq 1 && (0\leq i,j\leq N-2) \end{aligned}\]隣接する 2 つのマスは必ずいずれかの $2\times 2$ の窓に同時に含まれ、 逆に $2\times 2$ の窓に星が 2 個あればその 2 個は必ず隣接しているので、 この $(N-1)^2$ 本の不等式は「星どうしが隣接しない」という条件と同値です。 上下・左右・斜めの区別も、窓を数え上げるだけで自動的に尽くされます。
PyQBPP プログラム
以下のプログラムは、上記の制約を ネイティブ制約 qbpp.cons() で宣言し、 Easy Solver でパズルを解きます:
import pyqbpp as qbpp
N = 10 # 盤面の大きさ = 領域の個数
K = 2 # 各行・各列・各領域に置く星の個数
# 各マスが属する領域の番号 (0 から N-1)。
REGION = [
[0, 0, 0, 0, 0, 1, 1, 1, 2, 2],
[0, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 2, 2, 3],
[0, 4, 1, 5, 5, 2, 2, 2, 3, 3],
[4, 4, 1, 5, 5, 6, 2, 2, 2, 3],
[4, 4, 4, 5, 5, 6, 7, 8, 8, 3],
[4, 4, 4, 5, 5, 6, 7, 8, 8, 3],
[4, 5, 5, 5, 5, 6, 7, 7, 8, 3],
[4, 5, 9, 9, 9, 6, 7, 7, 8, 8],
[9, 9, 9, 9, 6, 6, 6, 7, 7, 6],
[9, 9, 9, 9, 9, 9, 6, 6, 6, 6],
]
x = qbpp.var("x", shape=(N, N))
# 領域ごとの星の個数を表す式のリスト。
region = [0] * N
for i in range(N):
for j in range(N):
region[REGION[i][j]] += x[i, j]
f = 0
for i in range(N):
f += qbpp.cons(qbpp.sum(x[i, :]) == K) # 行 i
f += qbpp.cons(qbpp.sum(x[:, i]) == K) # 列 i
f += qbpp.cons(region[i] == K) # 領域 i
# 2x2 の窓に星は高々 1 個 = 星どうしは隣接しない。
for i in range(N - 1):
for j in range(N - 1):
f += 2 * qbpp.cons(qbpp.sum(x[i:i+2, j:j+2]) <= 1)
sol = qbpp.EasySolver(f).search(target_energy=0)
# 解の表示: 星が置かれたマスは領域の文字を括弧で囲む。
for i in range(N):
line = [" "] * (2 * N + 1)
for j in range(N):
line[2 * j + 1] = chr(ord("A") + REGION[i][j])
if sol(x[i, j]):
line[2 * j] = "("
line[2 * j + 2] = ")"
print("".join(line).rstrip())
qbpp.var("x", shape=(N, N)) は $N\times N$ のバイナリ変数の配列 x を生成します。
領域は行や列と違って形が不定なので、盤面を一度走査して region[r] に領域 $r$ のマスの変数を足し込み、 領域ごとの星の個数を表す式のリストを作ります。
3 種類の等式制約と $2\times 2$ の窓の不等式制約は、いずれも qbpp.cons() で宣言します:
x[i, :]は行 $i$ の $N$ 個の変数、x[:, i]は列 $i$ の $N$ 個の変数です。x[i:i+2, j:j+2]は左上が $(i,j)$ の $2\times 2$ の窓の 4 個の変数です。- これらに
qbpp.sumを適用した式に== Kや<= 1を書くと制約になります。
qbpp.cons() で宣言した制約は、ペナルティ式に展開されずにソルバへ直接渡され、 ソルバは制約を満たすように探索します。 詳しくは 非線形関数とネイティブ制約 を参照してください。
このパズルには最小化したい目的関数がなく、すべての制約を満たす配置を 1 つ見つければ解けます。 制約をすべて満たすとエネルギーが $0$ になるので、 search(target_energy=0) で目標エネルギー $0$ に到達した時点で探索を打ち切ります。
実行すると解が出力されます。星が置かれたマスは (A) のように領域の文字が括弧で囲まれ、 それ以外のマスは領域の文字がそのまま表示されます (星どうしは隣接しないので、括弧が隣のマスの文字と重なることはありません):
(A)A A A(A)B B B C C
A B(B)B B B B C C(D)
A E B F F(C)C(C)D D
E E(B)F F G C C C(D)
E E E F(F)G(H)I I D
E(E)E F F G H I(I)D
E F F(F)F G(H)H I D
(E)F J J J G H H(I)I
J J J(J)G(G)G H H G
J(J)J J J J G(G)G G
各行・各列・各領域にちょうど 2 個ずつ星があり、 どの 2 つの星も上下・左右・斜めに隣接していないことが確認できます。
制約の重み
qbpp.cons() で宣言した制約は、スカラーを掛けることで重みを変えられます。 上のプログラムでは、$2\times 2$ の窓の制約だけを 2 * と重くしています。
制約を満たす配置を探すという問題では、どの制約も等しく満たされなければなりませんが、 重みは探索中の「どの違反を先に直すか」という優先順位を決めるため、 解が見つかるまでの時間に影響します。 このパズルでは、行・列・領域の個数制約に対して隣接の制約を重くすると、 星の個数を保ったまま星を動かす探索になり、解に到達しやすくなります。